ロレックス中東モデル研究室
【第4回】番外編
~ハンジャール文字盤について
(その3)~
「ロレックス中東モデル研究室」と銘打っている以上、番外編とはなりますが、ロレックス以外のブランドにおけるハンジャール文字盤に焦点を当てます。
筆者が現物、ネット合わせて文字盤上にKhanjarを見たことがあるブランドは以下の通りです。
Patek Phillip、Audemars Piguet、Piaget、Cartier、IWC、Breitling、Royama Geneve、Boume &Mercier、Rado、Eterna…。
きっと他にもある事でしょう。また文字盤にKhanjarが入っている時計の内、裏蓋にAspreyの刻印がなされているPiagetやAudemars Piguetの存在も確認しています。
今回は、文字盤にKhanjarが記されたCartier Santos Carree ref.2964をご紹介します。
Cartier Santos Carreeは、時計史に名を残す作品と言えるでしょう。女性の腕時計は装飾品としてすでに1800年代後半に出回っていましたが、1900 年代初頭、男性はまだ懐中時計を着用していました。この状況は、1904 年にLouis Cartierが欧州、ブラジルにおける航空界のパイオニア、Alberto Santos-Dumontのために最初の男性用腕時計をデザインしたときに変わりました。
飛行中に懐中時計を見るのは不便だと漏らすこの友人のために、Louis Cartierは時計をブレスレットに取り付けるというアイデアを思いつきました。この新しい時計は初のパイロットウォッチというだけではなく、初の男性用腕時計にもなりました。それまでのCartierはジュエリーと女性用時計に重点を置いていましたが、Alberto Santos-Dumontが有名人であったことが、この革新的なデザインを世の男性に知らしめるのに大いに役立ちました。
Cartier Santos Carreeは、男性と時計との関わり方を再構築した先駆者であるばかりでなく、革新的な美学も備えていました。
それまでの男性用時計は懐中時計で、ポケットから取り出しやすい様に滑らかなディテールを備えた丸い物ばかりでした。
対照的に、Santosは、四角いケースとベゼルにネジを備えた、力強く実用的な美学を持っていました。
Santos Carreeはハリウッドのスクリーンにも登場しています。1987 年の映画『ウォール街』で俳優マイケル・ダグラスが演じる大物投資家であるゴードン・ゲッコーが着用していました。
アメリカのビジネスパーソンはボリュームがあり見栄えのするロレックスを好む傾向がありますが、監督のオリバー・ストーンは、第一級の美術品収集家としての顔も併せ持つゴードン・ゲッコーの美意識をこの時計で表現したかったのではないでしょうか。
Santosは、20世紀初頭に発表されて以来100年以上、Cartierの コレクションの定番であり続けています。 1987 年にモデルチェンジを受け、Santos Galbéeとして再スタートを切りました。 Galbéeモデル は、より湾曲したラグと一体型メタル ブレスレットの採用により、Santosをより洗練された時計に変えました。
写真のSantos Carree ref.2964は、 29 x 41 mm のユニセックス時計です。
ケース、ねじ込み式ベゼル、一体化された ブレスレットは 18K イエローゴールド製です。ブレスレットのクラスプにはカルティエの「C」が交差したロゴが刻まれています。
磁器の文字盤上にはカルティエの伝統的なローマ数字プリントの代わりに、シンプルなイエローゴールドのバトンマーカーが配置されています。
文字盤の12時位置にハンジャールの紋章が施されていることから、この時計がオマーン王室からの委託を受けて製造されたことがわかります。製造年代から見て、Asprey経由でCartierに発注された事で間違いないでしょう。
この記事を書いた人
ZEN
エネルギートレーディング業に従事する国際派。職業柄か中東モデルの研究に余念がない。座右の銘は”お金惜しむな名を惜しめ”。