カルティエの歴史
常に時代を先取りした作品を生み出し世界を驚かしてきた職人集団
カルティエは、ルイ・フランソワ・カルティエによる 1847 年の創業にまで遡る、名高い歴史を持つフランスの有名な高級ジュエリーおよび時計のブランドです。
同社は、職人の持つ技巧、革新性のある作品、そして時代を超えた芸術的デザインを生み出すことに重点を置き、高級ジュエリーと時計の世界を形作る上で歴史的に重要な役割を果たしてきました。
カルティエの持つ様々なコレクションを紹介しながら、現代にいたるまでの道のりを辿っていきたいと思います。
ルイ・フランソワ・カルティエによる設立からの来歴
カルティエは1847年、ルイ・フランソワ・カルティエによってフランスのパリに設立されました。当初、同社はルイ・フランソワがジュエリーを制作し、選ばれた顧客に販売する小さな工房でした。
1888年ルイ・フランソワの死後、3人の息子、ルイ、ピエール、ジャックが事業を引き継ぎます。彼らは1902年にロンドンにブティックをオープンし、1909年にはニューヨーク市と、ブランドを次々に拡大していき、カルティエが国際的なブランドになるのに尽力しました。
20世紀初頭、カルティエは、プラチナをジュエリーに使用して、複雑で繊細なデザインの作品を生み出しました。
「パンサー」モチーフや「トゥッティ フルッティ」スタイルなど、カルティエの象徴的なデザインのいくつかは、この時期に導入されました。
カルティエは、男性用腕時計の初期のメーカーの1つでもありました。
1911年にブラジルの飛行士アルベルト・サントス・デュモンのために作られた「サントス」は、近代的な腕時計の最初の1つと考えられています。その後、カルティエは「タンク」や「パシャ」など、現代まで続く歴史的な時計のラインを発表しました。
カルティエは、王室やセレブリティの要望に応えることでも評判を得ました。 彼らの顧客の中には、イギリス国王エドワード7世、アレクサンドラ女王、ウィンザー公爵夫妻、そして多くのハリウッドスターが含まれていました。
これにより、贅沢と洗練の象徴としてのカルティエの地位が確固たるものとなりました。
第二次世界大戦後、カルティエは所有権の変更を経験しました。1960 年代にピエール・カルティエが亡くなってから、それまで続いてきた一族経営を取り止めます。そして、ブランドは拡大を続け、世界中の有名な場所にブティックをオープンしていきました。
1970 年代、カルティエはイメージを近代化するためにリブランディング プロセスを実施しました。 彼らは、コミットメントの象徴的なシンボルとなった「Love」ブレスレットを発表しました。この時期にフレグランスやアクセサリーの分野にも進出しました。
1988年から、スイスの高級品グループ、リシュモングループに名を連ねます。 このラグジュアリーグループに所属することにより、カルティエは、その独自のアイデンティティと職人技を維持しながら、大規模な高級コングロマリットのリソースと専門知識の恩恵を受けることができました。
21 世紀においても、カルティエはジュエリーと時計製造の両方で 、クラシックなデザインを保存し復活させながら、新しいコレクションを発表し続けています。
カルティエは現在、パリ、ニューヨーク、ロンドン、東京、上海など、世界中の主要都市にブティックを構え、優れたジュエリーと時計で目の肥えた顧客にサービスを提供し続けています。
カルティエの豊かな歴史は、職人技とその創造性、品質への取り組みによって特徴づけられています。
象徴的なデザインと不朽の魅力で知られる、世界で最も名高い高級ブランドの1つとしての地位を維持しています。
カルティエの主なコレクション一覧
ラブ コレクション | 「ラブ」コレクションは1969年ニューヨークにてアルド・チプロによって生まれました。象徴的なモチーフと、永続的な献身とロマンスを象徴する「ラブ」ブレスレットで知られています。 |
パンサー コレクション | ヒョウはカルティエのデザインで繰り返し登場するモチーフであり、優雅さ、力強さ、独立性を表しています。 このコレクションは、パンサーをテーマにしたジュエリーと時計です。 |
タンク コレクション | 「タンク」コレクションは、軍用戦車のデザインから着想を得た、すっきりとしたラインと長方形の形状が特徴です。 時計やジュエリーも含まれます。 |
トリニティ コレクション | 「トリニティ」コレクションは、友情、愛、忠誠を象徴する、3 つの異なる色のゴールド (イエロー、ホワイト、ローズ) の連動リングが特徴です。 |
バロン ブルー ドゥ カルティエ コレクション | バロンブルーコレクションは、その特徴的なカボションリュウズの配置と、ラウンドケースデザインで知られています。 |
サントス ドゥ カルティエ コレクション | 航空界のパイオニア、アルベルト・サントス・デュモンの依頼から始まったコレクションです。 四角いケースとビスを用いたデザインが特徴的です。 |
パシャ ドゥ カルティエ コレクション | 「パシャ」コレクションは、丸いケースと特徴的なアラビア数字で知られる時計を展開しています。 クラシックかつスポーティなデザインです。 |
カクタス ドゥ カルティエ コレクション | このコレクションには、サボテンの独特の質感と美しさを表すジュエリーが揃っています。 |
ジュスト アン クル コレクション | 「ジュスト アン クル」コレクションは、「ただ一本の釘」というフランス語が元になっています。釘をモチーフにした斬新なアイデアを元に生まれたコレクションです。 |
アミュレット ドゥ カルティエ コレクション | 「アミュレット」コレクションには、身に着ける人に幸運と保護をもたらすと信じられている、宝石で飾られた繊細なペンダントが含まれています。 |
カルティエ コレクションのカレッセ ドルキデ | このコレクションは蘭をイメージして製作されています。 |
ハイジュエリー コレクション | カルティエは、珍しい宝石や複雑なデザインを特徴とする、ユニークで並外れた作品を備えたハイジュエリー コレクションをリリースしています。 これらのコレクションには、「マグニチュード」、「レーヴ ダイユール」、「レ ギャラクシー ドゥ カルティエ」などの名前が付いています。 |
Louis Cartier Collection / ルイカルティエコレクション
1973年に一気に12モデルの腕時計が発表されました。
これはカルティエが社運を賭けて発売した腕時計のラインナップでした。
3代目社長の「ルイ・カルティエ」が遺した名作時計を復刻コレクションとして12本発売しました。
発売した12本のコレクションは以下の通りです。
・「Tank Normal(タンク・ノルマル)」
・「Tank Louis Cartier(タンク・ルイ・カルティエ )」
・「Vandome(ヴァンドーム)」
・「Gondole(ゴンドーロ)」
・「Santos(サントス)」
・「Ellipse(エリプス)」
・「Ceinture(サンチュール)」
・「Baignoire(ベニュワール)」
・「Square(スクエア)」
・「Cousen(クッサン)」
・「Faberge(ファバージ)」
・「Cristallor(クリスタロ)」
当時、カルティエのコレクションではイエローゴールドが主に使用されていたため、12種全てで採用されました。
各モデルの解説をしていきたいと思います。
タンク ノルマル
上下、左右の井桁部分がすべて同じ太さでタンクルイカルティエより力強く、正にルノー製戦車を思わせる通称「ノルマル」と呼ばれているものです。
カルティエの歴史の中でも象徴的な時計の 1 つです。
タンクノルマルは1917年に初めて作成され、第一次世界大戦中に使用された装甲軍用戦車のデザインからインスピレーションを得ました。その長方形のケース形状は戦車のキャタピラ部分に似ており、そのすっきりとしたラインで知られています。
タンクノルマルは、側面がわずかに湾曲した長方形のケースを特徴としており、独特でエレガントな外観を与えています。 ケースはプロポーションと対称性が特徴で、リューズにはサファイアカボションがセットされています。
ローマンダイヤルは今も昔も変わりませんが、初代はブレゲ針でした。後にバトン針になります。
シンプルな文字盤デザインは時計のタイムレスな魅力を高めています。
素材は、ステンレス スチール、ゴールド (イエロー ゴールド、ホワイト ゴールド、またはローズ ゴールド)、場合によってはプラチナなど様々です。
歴史的に、タンク ノルマルの多くは手巻きの機械式ムーブメントを搭載していましたが、カルティエは利便性を高めるために、より現代的なバージョンの自動巻きムーブメントも導入しています。
クラシックな時計製造と控えめな高級感を好む人々にとって、今でも垂涎のタイムピースです。
「カルティエ プリヴェ」の7作目としても登場しています。
オリジナルのデザインを踏襲し、面取りされたサファイアガラスが採用されているのが大きな特徴で、「カルティエ プリヴェ」コレクションに初採用となるブレスレットは、サテン仕上げとポリッシュ仕上げが織り交ぜられ、ケースと見事に調和しています。
その他レイルウェイトラックと、10時部分に「cartier」のシークレットサインが配されるなど、タンクのデザインコードに忠実なディテールも散りばめられています。
イエローゴールドまたはプラチナケースのブレスレットモデルの他、アリゲーターストラップモデルや、スケルトンムーブメント搭載モデルなど、全7モデルがラインナップしています。
タンク・ルイ・カルティエ
カルティエ タンクは、カルティエ ブランドの創設者の1人であるルイ カルティエによってデザインされ、第一次世界大戦中に使用された新型のルノー戦車を元にデザインされました。
従来の丸い時計とは一線を画した幾何学的な形状は、ライン、対称性、幾何学的な形状を特徴とするアールデコ運動の影響を受けています。
放射状のローマ数字、レイルウェイ・インデックス、ブルースチールの針、カボションのリューズなどは後年のタンクシリーズに引き継がれていく極めてユニークな特徴となりました。
人気のあるタンクモデルには、タンク ルイ カルティエ、タンク ソロ、タンク アングレーズ、タンク フランセーズなどがあります。
歴史的な重要性としては、王族、著名人、政治指導者など数多くの著名人が着用してきました。ジャクリーン・ケネディ、ダイアナ妃、アンディ・ウォーホル、イブ・サンローランなどの人物のお気に入りの時計として知られています。その根強い人気と時代を超えて愛されるデザインにより、現代に至るまで、誰もが欲しがる高級時計となっています。
ヴァンドーム
ヴァンドームの登場は1920代に遡ります。
ヘミングウェイとルイ・カルティエはパリの街を馬車で流していました。その時、馬車のシャフトのアタッチメントを見て思いついたのが「ヴァンドーム」と呼ばれる時計でした。
ラグのデザインにその特徴的が表れており、ヴァンドームの一つの象徴ともされています。
一説によるとカルティエ本店にほど近い「ヴァンドーム広場」で思いついたことから、この名前がついたと言われています。ヴァンドーム広場は、パリ1区の世界中のラグジュアリーブランドが出揃う広場です。
「ヴァンドーム ルイ カルティエ」は、そんな目の肥えた富裕層相手にも商売ができるという事を示した象徴のような時計でした。
【マスト ドゥ ヴァンドーム】
1973年にロバート・ホックが「レ・マスト・ドゥ・カルティエ」を発表し、「誰もが持っていなければならない」という意味合いのシリーズを登場させたとき、マスト・ドゥ・ヴァンドームも生まれました。
オリジナルの「ヴァンドーム・ルイ・カルティエ」に敬意を評しつつ、様々なカラーの文字盤を持った新シリーズを大量に生産し、この時計は大ヒットしました。
マス ト ドゥ ヴァンドームは、オリジナルの「ヴァンドーム ルイ カルティエ」にオマージュを捧げつつ、様々な文字盤のカラーでリリースされました。また、カルティエがクオーツウォッチを発売したのも初めてのことでした。
このマストラインは若い世代を中心に大ヒットを記録し、カルティエの年間の売り上げに多大な貢献をしました。
その後、男性用、女性用、仕上げの異なる様々なマストラインの時計が登場しました。
マスト ドゥ ヴァンドームは2000年代半ばに、製造中止となっています。
ゴンドーロ
箱型を意味する『ゴンドーロ』は、ダブルラインケースやクッション型のデザインがカルティエのドレスウォッチらしく人気のモデルです。
この「ルイ・カルティエ コレクション」の12種類の時計を集めることはマニアの中でも夢とされていますが、”ゴンドーロ”はその中でも通称”ジャンボ”と呼ばれる丸みを帯びた籠型の時計を表し、縦型と横型2種類のモデルがありました。レディースやオートマティックのモデルもございますが、ジャンボのモデルが最も人気があります。
ホワイトの文字盤に、視認性の高いブラックのローマ数字とソード針が特徴です
サントス
サントスコレクションは、カルティエの最も象徴的な時計コレクションの1つです。
1911年にルイ・カルティエが友人のブラジル人飛行家アルベルト・サントス・デュモンから『飛行機の操縦中に手を離さず時間を確認したい』と依頼を受け作成したものです。
サントスの時計は、航空業界のニーズを念頭に置いて、従来の懐中時計よりも実用的になるように設計された、史上初の腕時計の1つです。
サントス ウォッチは、現在ではコレクションの象徴的な要素となっている、四角いケース・ベゼルのビズの装飾・レザーストラップを特徴として誕生しました。
正方形または長方形のケースの形状は、当時主流だった円形の時計ケースとの大きな違いでした。
ベゼルとブレスレットのビスの装飾は、当時の産業および機械の革新を象徴しています。
ローマンダイヤルとブルーサファイアカボションが付いたリュウズは、カルティエらしいクラシックな印象を与えます。
人気のあるモデルには、サントス ドゥ カルティエの他、サントス デュモン、サントス ガルベ、サントス ドゥモワゼル、サントス オクタゴンなどがあります。
カルティエは、その伝統を守りつつも、現代の技術基準を満たすためにサントス コレクションを継続的に更新および進化させてきました。
現代のバージョンには、自動巻きまたはクォーツムーブメントが搭載され、一部のモデルには、クロノグラフやムーンフェイズなどの機構が備わりました。
カルティエ サントスは、高級時計における伝統と現代性の融合を好む人々にとって人気の選択肢であり続けています。
エリプス
エリプスは楕円型の意味を持ちます。
イエローゴールドのケースは、ステップベゼルのダブルラインが特徴的です。直線と曲線のバランス等、全体的な仕上がりは上品で、伝統のローマンダイヤル、サファイアカボションがエレガントな雰囲気を演出してくれます。
6時の位置の”Paris”表記がある場合、オリジナルであることの証明ともなり希少です。
ムーブメントには、カルティエの時計に多く使われた、信頼性の高い手巻きキャリバー78-1を搭載。カルティエらしいクラシックなディテールで、全体的にまとまりのある気品の溢れたモデルです。
サンチュール
サンチュールはフランス語でベルトを意味します。
その名の通り、ケースはベルトのバックルのように見えます。四角い時計の角を落としたような形状で、リュウズは平面に作られており、ベゼルのスロットにきれいに収まっています。おなじみのカボションリュウズが存在せず、見た目は他のルイ カルティエ コレクションの時計と比べても、よりスタイリッシュです。
左右対称のシルエットを演出した八角形のケースデザインは、アールデコの概念である直線の美しさを感じさせてくれます。
1973年のルイカルティエコレクションでは、25mmと27mmの2つのケースサイズで販売されるようになりまりた。その後、より大きなサイズの31mmも登場しました。
ルイカルティエコレクションではイエローゴールドが主に使用されていましたが、ホワイトゴールドのケースも少数ではありますが生産されていました。
基本的には手巻きキャリバーCal.78.1が搭載されていましたが、大型の31mmケースには、ETA社製自動巻きCal.170が搭載されていました。
6時位置に”PARIS”の文字が表記された通称「パリスダイヤル」の時計は、カルティエに修理に出すと文字盤が”SWISS”表記に代わってしまうため、今では珍しいです。
タンク ベニュワール
ベニュワールの前身が誕生した年代は1912年に遡ります。
ルイ・カルティエが、当時主流だった円形の時計ケースに疑問を感じ、楕円形時計をデザインしました。
この懐中時計を見たロシア皇族マリア・パヴロヴナ氏が「まるでバスタブみたいだ」と言ったことから、フランス語でバスタブを意味する「ベニュワール」の愛称となりました。
1958年には「オーバル サントレ」と呼ばれる、ケースが手首に沿ってやや湾曲したウォッチが誕生しました。
ベニュワールは1967年にレディースドレスウォッチとして発売されます。
素材にゴールドのみを使用し、ダイヤ等の貴金属をふんだんに配したラグジュアリーウォッチで、その滑らかな曲線のデザインは、女性の手元に柔和な印象と高貴さを与えます。
ベニュワールは基本的に18Kゴールドのみが用いられるコレクションです。それ故、カルティエの中でも特に高級なシリーズであるとされます。
リュウズは、ブルーサファイヤや、ダイヤモンドで装飾され、ベルトはゴールドのブレスレットや、アリゲーターストラップ等がラインアップされています。
幾何学的なアール・デコの影響を受けるカルティエにおいて、ベニュワールのブレスは例外的に、滑らかな曲線のみで構成されたコマが連なって出来ており、大きな特徴となっています。
1973年にはルイカルティエコレクションの一つとして発表されます。
2009年にはモデルチェンジが行われています。
継承されてきたオーバル型のケースやブレスレットのデザインはそのままに、ケースにエッジをきかせて全体的にシャープな印象になりました。インデックスの表記は一回り大きくなり視認性も上がりました。このモデルチェンジによって、ベニュワールはそれまでのクラシックな高級時計から、モダンなモデルへと様変わりしました。
その10年後、2019年に、原点回帰となる1920年当時のデザインを参考にした“ベニュワール1920”が発表されました。新作の発表とはいえ、往年のモデルの復活に喜んだファンも多かったようです。
派生
ベニュワールの派生モデルに 「ベニュワール アロンジェ」 と 「クラッシュ」 があります。
1967年に「クラッシュ」が発表されます。交通事故によって形が変形したベニュワールが元になっているという説があります。生産数も少なく、貴重なシリーズです。
1960年代には、ベニュワールをさらに縦に伸ばした形の「ベニュワール アロンジェ」が発表されます。
アロンジェには「引き延ばした」等の意味があります。
手首が隠れる程のケースのサイズではありますが、滑らかなカーブがよくなじみ、着け心地は良好です。
スクウェア
スクウェアはゴンドーロを横型にしたモデルで、ゴンドーロよりも希少とされています。
均整のとれた独特な丸みのあるフォルムのイエローゴールド製スクエアケースが特徴的で、力強くも柔らかい印象を与えます。
カルティエらしいローマンダイヤルとレイルウェイインデックスは、上品さを演出してくれています。
文字盤の「PARIS」表記もカルティエのこだわりを感じさせます。
クッサン
クッサン ドゥ カルティエの大きな特徴は、クッション型のケースです。
「クッサン」とはフランス語で「クッション」または「枕」を意味し、特徴的なクッション型のケースを指します。
クッサンのケースは角が丸く、四角い形状をしており、ヴィンテージ風のユニークな外観を与えています。
このデザインは、20世紀初頭の時計製造の伝統を思い起こさせます。カルティエのアールデコデザインの歴史の中で、ストレートなスタイルが重んじられる中、どのコレクションの時計にも属さない独自のデザインです。
ベゼルが竹のようなデザインになっている事から、バンブーと呼ばれることもあります。
文字盤はローマ数字のアワーマーカーとカルティエの特徴である青い剣の形をした針が特徴です。
2022年にはクッサン ドゥ カルティエの最新コレクションが発表されました。
ダイヤモンドが螺旋状にケースを取り巻き、リュウズにもダイヤモンドがあてがわれてたデザインです。
立て爪で留めるのではなく、トライアングル形の小さな爪でダイヤモンドを留めているため、指で触れてみると感触はなめらかな仕上がりです。
ファベルジェ
ファベルジュは、ルイカルティエコレクションの一つとして1973年に発売されました。丸みを帯びた曲線が美しいトノータイプのケースが特徴の時計です。
ラグ部分が正面から見えないデザインで、その美しいシルエットが一層際立っています。
ルイカルティエコレクションの中でも、フェイスサイズは大きめでゴージャス感があります。
カルティエ伝統のホワイトローマンダイヤルに、ブルースチールハンドとサファイアカボションリューズを備えます。
クリスタロー
クリスタローは1973年に発表されたルイ・カルティエ・コレクションと呼ばれる12モデルの内の一つ。
ブルースチールの針にローマンインデックスとレイルウェイトラックのカルティエお馴染みのデザインをベースとしながらも、結晶の形を模した直線的なケースが目を引きます。
3段のケースは重厚感のある佇まいで、タンクやサントスと比べて比較的大きめのサイズであることから、ルイ・カルティエ・コレクションの中でも、ひと際目立つ存在感です。
ラグの部分も正面から隠れているので、ケースの形がさらに強調されています。 白い文字盤には、黒塗りのローマ数字と、6時間位置の下にある「パリ」のサインがあります。
ブルースティールの針は、エレガントな形状のブルーカボションリューズと非常によく合います。
ルイ カルティエ コレクションの12種でした
さらにカルティエのコレクションを取り上げていきます
パシャ
1930年代、カルティエに「自宅のプールで泳いでも付けられる時計」を依頼したマラケシュのパシャ(太守:トルコで高官を意味する)にちなんで名付けられました。開発当初はタンクをベースにしたスクエア型のデザインでしたが、1943年にパシャシリーズの原型となるラウンド型の防水時計が誕生します。
1973年のルイ カルティエ コレクションの次の戦略として、1985年にパシャは高級時計のコレクションとして再度発売されます。
1980年代、ロレックスがサブマリーナのゴールドウォッチを発表し市場で受け入れられ、ラグジュアリースポーツのイエローゴールドの人気と需要が高まりました。そこで新たにデザインを手がけたのが、オーデマピゲのロイヤルオーク、パテックフィリップのノーチラスなどを手がけ、70年代に成功を収めたデザイナーのジェラルド・ジェンダ氏です。これにより、カルティエは時計のラインナップにラグジュアリースポーツを加えることに成功しました。
特徴的なねじ込み式リュウズキャップは防水の機能とともに、デザインのアイデンティティとなっています。リュウズキャップはステンレスの他、ブルーサファイアやカボションで飾られており、カルティエらしいエレガントさを携えます。またチェーン部分に飾ることができるチャームも存在します。
文字盤には3・6・9・12の数字がアラビア数字で表されており、柔らかい書体も含め独特のスタイルです。
一部のモデルには、クロノグラフやGMT機能が備わり、2022年にはムーンフェイズモデルが発売されるなど、多様性のあるコレクションを展開しています。
また、パシャはもともと、水関連のアクティビティに適したスポーティで堅牢な時計としてデザインされました。 そのため、パシャの多くは優れた耐水性を備えています。
カルティエ パシャ コレクションは、ブランドの伝統的な職人技と高級感を、よりスポーティでカジュアルなデザインと組み合わせたもので、高級時計のクラシックな要素と現代的な要素の両方を好む人にとって多用途の選択肢となっています。
その特徴的なリューズキャップと丸いケース形状は、高級時計製造の世界で傑出したコレクションであり続けています。
バロンブルー
「バロン ブルー ドゥ カルティエ」は、カルティエが生み出した人気の個性的な高級時計ラインで、現在のカルティエの代表作です。
このコレクションは 2007年に発表され、それ以来、エレガントなデザイン、特徴的なブルーサファイアのカボションリューズで知られるカルティエの象徴的な時計ラインの1つになりました。
バロンブルーの最大の特徴は、凸型のラウンドケースで、ユニークで目を引く外観です。このデザイン要素が「Ballon Bleu」(フランス語で「青い風船」を意味する)という名前の由来となっています。
ケースの側面に取り付けられたリューズのデザインも象徴的です。リュウズが内側に埋め込まれたようなデザインは、装飾要素としてだけでなく、時計を使用する際の誤作動を防ぎ、機能的にも働いています。
文字盤にはローマンインデックス、バトン針を備えており、クラシックなデザインです。ギョーシャ彫りを施したものや、マザーパールをあしらったものもあり、どのモデルも高級感があります。
女性のための柔らかく小ぶりなデザイン仕様にも思えますが、実際はメンズも十分に着用できる幅広いラインナップがあります。
英王室のキャサリン妃が、結婚3周年記念にウィリアム王子からバロン ブルーの腕時計を贈られたことでも有名です。
また、女性のみならず、男性の著名人からも人気が高く、ハリウッドスターのジョニー・デップ氏やアーティストのアッシャー氏など、多くのファンがいます。
パンテール
1983年に初代パンテールウォッチ(フランス語で豹)が発売されました。
登場とともに女性に大人気となりましたが、2000年代に一旦生産が終了しました。
その後、2017年に幅広いラインナップを従えて復活します。
オールポリッシュの新作モデルは当初17種でしたが、ステンレスからゴールドモデル、コンビネーションモデルに加えて、特別モデルなども含めると最終的に全38種にまで上りました。
小ぶりなケースに5連のブレスレットが組み合わされ、豹のようなしなやかさを持ち合わせた時計に、ゴールド素材やダイヤモンドが備わり、ジュエリーとしても輝きます。
パンサーは長い間カルティエのシンボルでもあり、ブランドの伝統と創造性とも結びついています。
ローマンダイヤルとバトン針、ブルーサファイアのカボションは健在で、シンプルかつエレガントなデザインに保たれています。また、パンテールは日常防水を備えており、エレガントなデザインに実用性を加えています。
元々カルティエが、デザインの中に豹を取り入れたのは1914年とされており、さらにパンテールを世界的に有名なシリーズに押し上げたのはデザイナーの「ジャンヌ・トゥーサン」です。
ルイ・カルティエの恋人だったとされており、宝石製作の世界で多大な影響を与えた人物です。
彼女は、まだアールデコの影響を受ける1930年代後半から、パンテールを始め、自然をモチーフにしたジュエリーを数多く残し、時の富裕層や著名人に人気を得ました。
トーチュ
ルイ・カルティエは、1912年に亀の甲羅をモチーフにしたラグジュアリーウォッチのトーチュをデザインしました。
トーチュはフランス語で「亀」を意味します。
ラウンド型の腕時計しかなかった時代に登場した、前衛的なフォルムで世間を賑わせましたが、やがて定番になりました。
わずかに湾曲したトノー型ケースは時計の美しさを増すだけでなく、着用時の快適性も高めます。
男性用・女性用トーチュウォッチのモデルは、ゴールド製やダイヤモンドセットモデル、フルパヴェダイヤモンドモデルなど、さまざまなスタイルがあります。
ヴィンテージらしい文字盤のデザインは、現代にはない特別な印象を持つデザインです。
クラッシュ
カルティエ クラッシュは、前衛的で型破りな時計デザインの1つです。
1967年、クラッシュはジャン=ジャック・カルティエがデザイナーのルパート・エマーソンと共同でデザインしました。
非常に不規則で非対称なケース形状を特徴とし、伝統的な時計のデザインを覆し、その不規則性が真の芸術作品とも考えられます。
この時計の起源にまつわる話としては、ある自動車事故でカルティエ ウォッチが衝撃と炎で溶けて、魅力的な形になったというものがありますが、真相は謎です。
ローマ数字のデザインは、各数字がケースに合わせて大きく伸び縮みし形が変わっています。
まるでケースが流動的に動いているようにも見えます。
型破りな外観にもかかわらず、カルティエ クラッシュは高級時計業界の象徴的で伝説的な時計となっています。
入手可能性が限られていることと、その誕生の背景にあるストーリーが、コレクターの間でその人気を高めています。 この時計は万人向けの時計ではないかもしれませんが、その大胆で芸術的なデザインを評価する人にとっては、この時計は時計デザインと創造性の真の傑作であると考えられます。
ちなみに、ロンドンブティック版の初代クラッシュは、世界に10数本しか現存せず、落札価格は150万3888ドル(約1億9590円)にも上った事例があります。
CPCP
CPCPとは、コレクション プリヴェ カルティエ パリの略です。1998年から2008年まで生産された本格的な機械式シリーズになります。
CPCPは、あえて過去に生産されたタンク、サントス、パシャ、トノーなどの定番モデルを採用し、最新式の上質な手巻き式ムーブメントと、ゴールド、プラチナ素材を組み合わせた高級シリーズとして発表しました。
「プリヴェ」とは、プライベートの意味であり、シリーズ名を訳すとカルティエパリのプライベートコレクションという意味合いになります。
その名前が示す通り、CPCPのモデルは「CARTIER PARIS」が文字盤の12時の目立つ位置に印字されていることが特徴です。
CPCPは、過去の名作モデル、上質なムーブメント、高級な素材を組み合わせた、カルティエの装飾品としての美しさ、優雅さを分かりやすく表現したシリーズといえます。
生産終了してからも、評価が高く、状態の良いものは今でも高騰しています。
基本的には機械式時計のメンズが中心でしたが、トノーやトーチュは手巻き式のレディースモデルも発表されています。
カルティエコレクション プリヴェ
2017年から、1年に1コレクションずつ発表されている限定コレクションです。
2023年迄に発表されているものは「クラッシュ」「タンク サントレ」「トノー」「タンク アシメトリック」「クロシュ ドゥ カルティエ」「タンク シノワーズ」「タンク ノルマル」となります。
レ マスト ドゥ カルティエ シリーズ
名作タンクを世界的に有名にした、レ マスト ドゥ カルティエシリーズ。
MUST(持つべきもの)と言うシリーズ名にこめられた幅広い人々に愛される作品作りを目指したカルティエの、
70年代から00年代に渡る名シリーズです。
貴金属を使用しないことで、手頃な価格で入手できることから、一躍ヒット作となりました。
この「レマスト ドゥ カルティエ」によって、70年代初頭、経営不振に陥っていたカルティエは、顧客層を広めることに成功しました。
このなかでもとくに人気だったのが「マストタンク ヴェルメイユ」です。
ヴェルメイユとは、シルバーに金を貼り付ける伝統的な手法のことを言います。
このモデルは、シルバーに厚さ1.5ミクロン以上のゴールドを貼り付けたヴェルメイユのケースを特徴としていました。通常より厚くゴールドの加工を施すことで、エントリーモデルでありながら、ラグジュアリーな質感を実現していました。
2021年には「レ マスト ドゥ カルティエ」のデザインをベースにした「タンクマスト」が登場して人気を博しています。
カルティエは、時代の流れを掴み、美術様式の変化も取り入れながら、様々なコレクションを展開してきました。
一方で、一目でカルティエと分かるローマンダイヤルや剣型の針などの伝統を守っています。
このディティールに対するこだわりが存在する限り、カルティエの芸術的価値はこれからも高まっていくでしょう。
この記事を書いた人-
SY
イリスラグジュアリー新人時計ライター。
ブランドの歴史を研究中。