クオーツ時計は是か非か : 藤野のリコメンド【第3回】

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藤野のリコメンド【第3回】

クオーツ時計について

クオーツ時計と聞いてみなさんどう思いますか?

クオーツの時計はずばり、女性のお客様にお勧めです。

着けたいときに確実に動いていますし、忙しいときでも手間がかかりませんから、その日の気分で気軽に時計を付け替えることができます。

また、ネイルをされているお客様は、ゼンマイを巻き上げることもないので、爪を痛めませんし、時間合わせも無用です。
通常、数年ごとに電池を交換すれば良いので、メンテナンスの手間もかかりませんし、手頃な価格で手に入る時計も多いです。
一見、大変便利に思われるクオーツ時計ですが、常に是非が問われ続けた過去があります。

セイコーセレクション レディース SSEH013

水晶振動子を腕時計のサイズに合わせて
音叉の形にカットするのは大変な作業をともなう
当時は均一にカットできずに苦労したという

クォーツ時計の起源をさかのぼれば、電圧を加えると正確な時間差で振動する水晶振動子からきています。
この動きを時計に用いようと考えたのが、ベル研究所のウォーレン・A・マリソンです。

1927年に、ウォーレン・A・マリソンは、電子回路の共振器として水晶を使用する実験を行いました。
水晶は電流が流れると正確な周波数で振動し、 この周波数が信じられないほど安定していたため、クォーツ時計は非常に正確な計時を行うことができると考えられました。

ここで作成された試作品が、最初のクォーツ時計です。
しかし、サイズはロッカーのような大きさで、主に研究機関などの利用に限られていました。

1960年代に入り、セイコーが東京オリンピックに合わせて、卓上型のクオーツ時計を作成、1967年に腕時計の試作型が制作されます。
そして、1969年、世界初のクオーツ腕時計「セイコークオーツアストロン 35SQ」が商品化されました。

1970年代は、腕時計のクオーツが機械式より高い価格で販売されており、クオーツ=先進の高級時計という時代でした。

SEIKOのクォーツ腕時計の開発も進み、ロードクオーツ、キングクオーツ、グランドクオーツ、TYPEⅡ、さらに水晶振動子を2つ搭載し、年差10秒まで追い込んだキングクオーツスーペリア、グランドクオーツスーペリアなどが発表されました。
当時の日本人はそのクォーツ独特のステップ運針をずーっと眺めたものです。
またNHKの毎正時の時報が出るたびに、時刻がぴったり合っているのを見ては興奮したものです。

スイスの時計業界が、いわゆるクオーツショックに見舞われたのも有名な話です。
パテックフィリップなどクォーツ時計の開発をいち早く進めていた一部企業もありましたが、スイスの時計業界全体に影響を及ぼし、不振に陥る企業が続出しました。

セイコークオーツアストロン 35SQ
グランドセイコー SBGX095 9F62-0AB0 9Fクォーツ 2015年

その後、1980年代に、機械式時計は復興しますが、今もなおクォーツ時計の是非が問われるのは、そういった利便性と機械式の魅力のせめぎあいから起こるものと考えられます。

このように、それまでの機械式時計の精度から飛躍的に向上したクォーツ式時計は、現在では世界で生産される時計のその大部分を占めるまでになりました。

その実用性から日常的に腕時計を利用する多くのユーザーの評価を得ているため、今後もクォーツ時計の根強い人気は揺るがないでしょう

ちなみに、クオーツ時計は電子部品を使用していますが部品がなくなったらどうなるのでしょうか。修理はできなくなるのでしょうか?gg

例えばパテック・フィリップ社はそのような事態になった場合、そのケースに入る機械式ムーブメントを供給するようです。
カルティエのクオーツ時計ですと、オーバーホールと言うよりはムーブメントを交換するようです。

クオーツ式ムーブメントは機械式と違って歯車にかかる負荷が小さい(逆脱進機)のでオーバーホールの間隔が長いです。
時計によって違いますが、2回ほど電池交換をしたら、オーバーホールをした方が良いとされています。

カルティエ タンク マスト クォーツ LM WSTA0055 2021年

この記事を書いた人-
藤野

シェルマンを定年退社した元店長
MRからこの業界に入り、お金持ちにオールドパテックを売りまくる。
時計愛を拗らせてパテックからオメガやセイコーのデジタルウォッチまでこよなく愛する哲学者。
最近は昭和ノスタルジーとセイコーと愛犬のレオンに思いを寄せる

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